【問題】
点と直線の距離公式の証明
点の座標を $A(x_0, y_0)$ 、直線を $l: ax+by+c=0$ とする。点Aから直線lにおろした垂線の足を $H$ とする。 このとき、線分 $ AH $ の長さが
$$AH = \frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$
となることを証明せよ。(座標計算を用いる方法)
【解答】
証明は以下の解説本文を参照。最終的に
$$d = \frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$
が導かれる。
導入
皆さんこんにちは!この記事では、数学II「図形と方程式」で登場する、超重要公式の一つ「点と直線の距離の公式」を証明していきます 🚗💨。 公式を覚えるだけでなく、「なぜこの形になるの?」という成り立ちを知ることで、理解が深まり、忘れにくくなります。 今回は、いくつかある証明方法の中でも、一番計算がストレートで、特別な発想がいらない「座標計算」を使って証明してみましょう。計算は少し大変ですが、中学校で習った知識と直線の方程式の知識だけで理解できますよ!
解説
考え方のポイント
証明のゴールは、点 $A(x_0, y_0)$ から直線 $l: ax+by+c=0$ に下ろした垂線の長さ $ AH=d $ を求めることです。 そのために、以下のステップで進めていきます。
- 垂線 $ AH $ (直線) の方程式を求める。
 - 直線 $l$ と垂線 $ AH $ の交点 $H$ の座標を求める。
 - 2点 $A$ と $H$ の間の距離を計算する(これが $ AH $ の長さ!)。
 
さあ、少し計算が長くなりますが、一つずつ丁寧にやっていきましょう!
ステップ1:垂線 AH の方程式を求める
まず、もとの直線 $l: ax+by+c=0$ の傾きを調べます。 $b \ne 0$ のとき、式を変形すると、
$$y = -\frac{a}{b}x – \frac{c}{b}$$
なので、直線 $l$ の傾きは
$$-\frac{a}{b}$$
です。
垂線 $ AH $ は、直線 $l$ に垂直に交わるので、その傾きは、元の傾きと掛けて-1になる数です。 (垂直条件:傾きの積 = -1) よって、垂線 $ AH $ の傾きは
$$\frac{b}{a}$$
となります。(ただし $a \ne 0$ のとき。$ a=0 $ の場合は後で考えます)
垂線 $ AH $ は、点 $A(x_0, y_0)$ を通り、傾きが $\frac{b}{a}$ の直線なので、その方程式は、
$$y – y_0 = \frac{b}{a}(x – x_0)$$
となります。
【もし $a=0$ や $b=0$ だったら?】
- $a=0$ のとき、直線 $l$ は $by+c=0$ つまり $y = -\frac{c}{b}$ (x軸に平行)。垂線 $ AH $ は $x=x_0$ (y軸に平行)。距離は $|y_0 – (-\frac{c}{b})| = \frac{|by_0+c|}{|b|}$ となり、公式 $\frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$ で $a=0$ とした場合 $\frac{|by_0+c|}{\sqrt{b^2}} = \frac{|by_0+c|}{|b|}$ と一致します。
 - $b=0$ のとき、直線 $l$ は $ax+c=0$ つまり $x = -\frac{c}{a}$ (y軸に平行)。垂線 $ AH $ は $y=y_0$ (x軸に平行)。距離は $|x_0 – (-\frac{c}{a})| = \frac{|ax_0+c|}{|a|}$ となり、公式で $b=0$ とした場合 $\frac{|ax_0+c|}{\sqrt{a^2}} = \frac{|ax_0+c|}{|a|}$ と一致します。 なので、以降は $a \ne 0$ かつ $b \ne 0$ として進めても大丈夫です。
 
ステップ2:交点 H の座標を求める
点 $H$ は、直線 $l$ と垂線 $ AH $ の交点です。 直線 $l$ の式:
$$y = -\frac{a}{b}x – \frac{c}{b}$$
垂線 $ AH $ の式:
$$y = \frac{b}{a}(x – x_0) + y_0$$
この2つの $y$ をイコールで結んで、$ x $ 座標( $x_H$ とします)を求めます。 $$-\frac{a}{b}x – \frac{c}{b} = \frac{b}{a}x – \frac{b}{a}x_0 + y_0$$ 分母を払うために、両辺に $ ab $ を掛けましょう。 $$-a^2x – ac = b^2x – b^2x_0 + aby_0$$ $x$ がついている項を左辺に、それ以外を右辺に集めます。 $$-a^2x – b^2x = -b^2x_0 + aby_0 + ac$$ $$-(a^2+b^2)x = -b^2x_0 + aby_0 + ac$$ $$(a^2+b^2)x = b^2x_0 – aby_0 – ac$$ よって、交点 $H$ のx座標は、 $$x_H = \frac{b^2x_0 – aby_0 – ac}{a^2+b^2}$$ となります。
次に $y$ 座標( $y_H$ とします)を求めます。直線 $l$ の式に $x_H$ を代入するのが少し楽そうです。 $$y_H = -\frac{a}{b} \left( \frac{b^2x_0 – aby_0 – ac}{a^2+b^2} \right) – \frac{c}{b}$$ $$= \frac{-ab^2x_0 + a^2by_0 + a^2c}{b(a^2+b^2)} – \frac{c(a^2+b^2)}{b(a^2+b^2)}$$ $$= \frac{-ab^2x_0 + a^2by_0 + a^2c – a^2c – b^2c}{b(a^2+b^2)}$$ $$= \frac{-ab^2x_0 + a^2by_0 – b^2c}{b(a^2+b^2)}$$ 分子を $b$ でくくると、 $$= \frac{b(-abx_0 + a^2y_0 – bc)}{b(a^2+b^2)}$$ $$y_H = \frac{-abx_0 + a^2y_0 – bc}{a^2+b^2}$$ これで交点 $H(x_H, y_H)$ の座標が求まりました。式が複雑ですが、あと少しです!
ステップ3:距離 AH を計算する
いよいよ、点 $A(x_0, y_0)$ と点 $H(x_H, y_H)$ の距離を計算します。距離の2乗 $AH^2$ を計算してから、最後にルートをとることにしましょう。 $$AH^2 = (x_H – x_0)^2 + (y_H – y_0)^2$$
まず $x_H – x_0$ と $y_H – y_0$ を計算します。 $$x_H – x_0 = \frac{b^2x_0 – aby_0 – ac}{a^2+b^2} – x_0$$ $$= \frac{b^2x_0 – aby_0 – ac – x_0(a^2+b^2)}{a^2+b^2}$$ $$= \frac{b^2x_0 – aby_0 – ac – a^2x_0 – b^2x_0}{a^2+b^2}$$ $$= \frac{-a^2x_0 – aby_0 – ac}{a^2+b^2} = \frac{-a(ax_0 + by_0 + c)}{a^2+b^2}$$
次に $y_H – y_0$ を計算します。 $$y_H – y_0 = \frac{-abx_0 + a^2y_0 – bc}{a^2+b^2} – y_0$$ $$= \frac{-abx_0 + a^2y_0 – bc – y_0(a^2+b^2)}{a^2+b^2}$$ $$= \frac{-abx_0 + a^2y_0 – bc – a^2y_0 – b^2y_0}{a^2+b^2}$$ $$= \frac{-abx_0 – b^2y_0 – bc}{a^2+b^2} = \frac{-b(ax_0 + by_0 + c)}{a^2+b^2}$$
さあ、これらを $AH^2$ の式に代入します。 $$AH^2 = \left( \frac{-a(ax_0 + by_0 + c)}{a^2+b^2} \right)^2 + \left( \frac{-b(ax_0 + by_0 + c)}{a^2+b^2} \right)^2$$ $$= \frac{a^2(ax_0 + by_0 + c)^2}{(a^2+b^2)^2} + \frac{b^2(ax_0 + by_0 + c)^2}{(a^2+b^2)^2}$$ 分母が揃っているので、分子をまとめます。 $$= \frac{(a^2+b^2)(ax_0 + by_0 + c)^2}{(a^2+b^2)^2}$$ 分母と分子で $(a^2+b^2)$ が1つ約分できますね。 $$= \frac{(ax_0 + by_0 + c)^2}{a^2+b^2}$$
最後に、両辺の平方根をとります。距離 $ AH $ は必ず0以上なので、 $$AH = \sqrt{\frac{(ax_0 + by_0 + c)^2}{a^2+b^2}} = \frac{\sqrt{(ax_0 + by_0 + c)^2}}{\sqrt{a^2+b^2}}$$ ルートの中に2乗が入っている形 $\sqrt{X^2}$ は、絶対値 $|X|$ と同じ意味でしたね。 したがって、 $$AH = \frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$ となり、目標の公式を証明することができました!🎉
結論
点と直線の距離の公式は、
- 点Aを通り、元の直線に垂直な直線の方程式を立てる
 - 元の直線と垂直な直線の交点Hの座標を連立方程式で求める
 - 2点A, H間の距離を計算する という、座標幾何学の基本的なステップを踏むことで証明できます。 途中の計算は少し複雑ですが、一つ一つの手順は決して難しくありません。公式の成り立ちを知っておくと、公式をより深く理解し、忘れにくくなりますね。
 
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