酸化還元の半反応式は暗記するな!誰でも書けるようになる「魔法の4ステップ」

【問題】

5. 次の各式に、 $e^-$ 、および必要であれば $\text{H}^+$ や $\text{H}_2\text{O}$ を書き加えて、酸化剤、還元剤の電子の授受を表す式を完成させよ。

(1) $\text{H}_2\text{S} \rightarrow \text{S}$ (2) $\text{Fe}^{2+} \rightarrow \text{Fe}^{3+}$ (3) $\text{HNO}_3 \rightarrow \text{NO}$


【まずは自分の力で考えてみましょう】

「化学反応式は覚えるもの」と思っていませんか? 特にこの問題のような「半反応式(電子 $e^-$ を含む式)」は、丸暗記しようとすると大変なことになります。

実はこれ、**「決まった4つの手順」**通りにパズルを組み立てるだけで、誰でも自動的に作れてしまうんです。 酸化数? 電荷? ちょっと自信がない…という人も大丈夫。

今から解説する手順を見ながら、まずは答えを見ずに手を動かしてみてください!


【解説】暗記不要!「半反応式」を作る4ステップ

こんにちは、スマスクの「先生」です。 今回は、化学基礎・化学で避けては通れない**「酸化剤・還元剤の半反応式の作り方」**を徹底解説します。

この式を作るには、以下の「魔法の4ステップ」を使います。これさえ覚えれば、どんな複雑な反応式も怖くありませんよ。

【半反応式作成の4ステップ】

  1. 【酸化数】 変化した分だけ、電子 $e^-$ を加える。
    • 酸化数が増えた $\rightarrow$ 右辺に $e^-$ (電子を失った)
    • 酸化数が減った $\rightarrow$ 左辺に $e^-$ (電子を受け取った)
  2. 【電荷】 両辺のプラスマイナスの合計を合わせるため、水素イオン $\text{H}^+$ を加える。
  3. 【原子数】 HとOの数を合わせるため、水 $\text{H}_2\text{O}$ を加える。
  4. 【確認】 原子の数と電荷が合っているかチェックして完成!

では、一問ずつ一緒に作っていきましょう。

(1) $\text{H}_2\text{S} \rightarrow \text{S}$

硫化水素が硫黄になる反応です。

  • Step 1(電子): 硫黄(S)の酸化数を見てみましょう。 $\text{H}_2\text{S}$ 中の S は $-2$ 、単体の S は $0$ です。 $-2 \rightarrow 0$ と 2増えている ので、電子を2個放出したことになります。右辺に $2e^-$ を足します。 $$\text{H}_2\text{S} \rightarrow \text{S} + 2e^-$$

  • Step 2(電荷): 左辺の電荷は $0$ 。 右辺は電子があるので $-2$ です。 バランスを取るために、右辺にプラスの電気を持つ水素イオン $2\text{H}^+$ を足してプラマイゼロにします。 $$\text{H}_2\text{S} \rightarrow \text{S} + 2\text{H}^+ + 2e^-$$

  • Step 3(原子数): 左辺に H が2個、右辺にも H が2個。酸素 O は登場しません。 これですでに原子の数は合っていますね。

完成!

(2) $\text{Fe}^{2+} \rightarrow \text{Fe}^{3+}$

鉄(II)イオンが鉄(III)イオンになる反応です。これはシンプル!

  • Step 1(電子): 酸化数が $+2 \rightarrow +3$ に 1増えています。 電子を1個失ったので、右辺に $e^-$ を足します。 $$\text{Fe}^{2+} \rightarrow \text{Fe}^{3+} + e^-$$

  • Step 2(電荷): 左辺は $+2$ 。 右辺は $+3$ と $-1$ ($e^-$) で、合計 $+2$ 。 すでに合っています!

完成!

(3) $\text{HNO}_3 \rightarrow \text{NO}$

さあ、これが一番の難関、希硝酸の反応です。でも手順通りやれば必ず解けます。

  • Step 1(電子): 窒素(N)の酸化数を数えます。 $\text{HNO}_3$ の N は $+5$ 、 $\text{NO}$ の N は $+2$ です。 $+5 \rightarrow +2$ と 3減っています。 これは電子を3個受け取った(還元された)ということ。左辺に $3e^-$ を足します。 $$\text{HNO}_3 + 3e^- \rightarrow \text{NO}$$

  • Step 2(電荷): 左辺の電荷を見てみましょう。$\text{HNO}_3$ は $0$ 、電子が $-3$ なので、合計 $-3$ です。 右辺の電荷は $0$ です。 左辺を $0$ にするために、水素イオン $3\text{H}^+$ を左辺に足します。 $$\text{HNO}_3 + 3\text{H}^+ + 3e^- \rightarrow \text{NO}$$

  • Step 3(原子数): 最後に H と O の数を合わせます。 左辺:Hが $1+3=4$ 個、Oが $3$ 個。 右辺:NとOが $1$ 個ずつ。

    足りないのは、Hが4個とOが2個です。 これはちょうど水分子 $2\text{H}_2\text{O}$ 分ですね!右辺に加えます。 $$\text{HNO}_3 + 3\text{H}^+ + 3e^- \rightarrow \text{NO} + 2\text{H}_2\text{O}$$

完成!


【解答】

(1)

$$ \text{H}_2\text{S} \rightarrow \text{S} + 2\text{H}^+ + 2e^- $$

(2)

$$ \text{Fe}^{2+} \rightarrow \text{Fe}^{3+} + e^- $$

(3)

$$ \text{HNO}_3 + 3\text{H}^+ + 3e^- \rightarrow \text{NO} + 2\text{H}_2\text{O} $$


【まとめ】半反応式は「手順」で解く!

今回のポイントを整理しましょう。

  1. 電子 $e^-$ :酸化数の変化分だけ足す。(増えたら右、減ったら左)
  2. 水素イオン $\text{H}^+$ :電荷のズレを埋めるために足す。
  3. 水 $\text{H}_2\text{O}$ :原子の数(HとO)を合わせるために足す。

この3ステップは、化学の入試問題で何度も何度も使います。 特に(3)の硝酸の反応式は頻出中の頻出です!


【解き直しのすすめ】白紙で再現できますか?

解説を読んで「ふむふむ、わかった」で終わらせるのはもったいない! 今すぐ、問題文だけを見て、白い紙に3つの式を書き出してみてください。

特に(3)番。「左辺に $3H^+$ 足して…右辺に $2H_2O$ 足して…」と、自分で理由を言いながら書けたら、もうテストで忘れることはありません。 この「再現する」作業こそが、点数アップへの最短ルートですよ!


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